地域を守り、農業の未来を創る。
-農業経営者を志す若者達の挑戦-
日本農業の未来にとって不可欠なのは、言うまでもなく次代の担い手です。後継者の確保が各地で課題となっていますが、同時に農業を職業にしたいと考える若者たちは確実に増えています。
そんな若者たちに農業生産技術だけでなく、マーケティング、商品企画、経営計画など経営者としての能力を身に付けさせ、地域のリーダーとしても活躍する人材を本格的に育成している日本農業経営大学校という学校があります。同校で学んだ、富山県入善町の若手農業者の森下信義さん(25)を訪ねました。
入善ジャンボ西瓜(スイカ)
引き継ぐ4代目
30年ごろから始まり戦前は黒部西瓜として栽培が盛んだったそうです。
その後、作付け転換が進んだが昭和40年代半ばから特産品として確立しようという取り組みが地域で始まり、その中心的な役割を果たしたのが、今回訪問した農業法人の(有)グリーン森下。
信義さんの父である代表取締役の森下和紀さんによれば、もともと森下家は代々、ジャンボ西瓜の栽培を手がけており、それを和紀さんの父が引き継いで地元ブランドとして確立しました。和紀さんが就農し結婚して家族一丸で経営を続けるなか、平成6年に社会保障制度などもしっかり導入した経営体にしようと法人化し(有)グリーン森下を設立しました。
現在は水稲40ha、大豆30ha、入善ジャンボ西瓜70a、ハウスネギ10a、そして最近は100本近くのモモ栽培も加わったといいます。従業員は4名、アルバイトは2名。
その従業員の一人が日本農業経営大学校を卒業し28年4月から就農した和紀さんの長男、信義さん。
就農1年目から、入善ジャンボ西瓜の栽培を専門に担っている母のさゆりさんから栽培指導を受けました。「私の祖父から始まった西瓜栽培ですから4代目ということになります。歴史ある大事な特産品。しっかり残していってほしい」と和紀さんは話します。
地域に根ざし全国とネットワーク
昨年春の就農から1年間は米づくりも西瓜づくりも基本はすべて体験しました。JA青年部にも加入し農薬散布ヘリ組合のメンバーにもなって青年農業者の仲間とも交流しています。
入善ジャンボ西瓜は西瓜本来の味を大切にするため接ぎ木をしない自根栽培で手間がかかり、病害虫防除など管理が重要だといいます。母のさゆりさんから作業について1つ1つ説明を受けたが、「いわゆる暗黙知の部分もあるようで、そう簡単に分かるものでもなく、毎回毎回学んでいくしかない」といいます。
地域にはかつて30人近くいた西瓜の栽培者が最近では10数人となっているなか、信義さんはブランド品を守り発展させたいと考えています。「歴史を土台にしながらも自分の代も新しいネットワークをつくって販売も広げていきたい」と話します。実際に子どもたちが集まるイベントなどで積極的に入善ジャンボ西瓜をPRしているといいます。
和紀さんは「親としてみれば4年も大学に行ったのにまだ勉強するのかと思った」と振り返るが、日本農業経営大学校については「先進的な農業経営者や食品企業のトップ層に話を聞けるなどなかなかできない体験だと思います。何よりも20人の寮生と農業への夢を語りこれからの仲間が全国にできるというのは社会人になるうえでも非常に貴重ではないでしょうか」と評価します。
入善町は農業後継者も多く法人化した家族経営が地域農業を引っ張っています。和紀さんは「基本は地域に根ざすしかない。米と田んぼの景観を守っているということに誇りを持ち、地域の農業者とのネットワークを大事にして農業を持続させていくことが大事」だと強調されました。
大自然を満喫しながらの農業実習
日本農業経営大学校では、1年次に4か月間の農業実習があります。
長野県の農場で大自然を満喫しながら農業実習に精を出したという、4期生の岩切啓太郎さん。
北八ヶ岳に位置する標高1000メートルの中山間地で、有機栽培にて野菜、穀物、お米を年間60品目以上栽培、出荷している農場で体験学習をさせていただいたそうです。
代表者の方の、夏の暑さに負けないくらい強い熱意と向上心に、とても刺激を受けたようです。
企業実習で栽培コンサルの
お客様訪問に同行
2年次には、3か月の企業実習があります。
3期生の星 裕之さんは、栽培コンサルティングを行っている企業で、お客様訪問を行う際に同行させてもらったそうです。
お客様がどのように困っていて、どんな風にアドバイスをするのか、また作物の生育状況の判断の仕方などを間近に見ることができたそうです。